① 人的ネットワーク構築で介護離職を防ぐ
② 介護にはどんな情報が必要かわかる
③ 介護費用とどう向き合うかがわかる
「父親が倒れて入院した」
今年の2月中旬に母親から電話がありました。
脳出血を起こし、半身不随になりました。
人一倍身体が丈夫な父親でしたが、
介護がはじまりました。
私は40代前半です。
主に35~50歳の方が該当すると思いますが、
介護は突然はじまります。
「介護のために帰ってきてくれないか?」と
両親に言われたらあなたはどうしますか?
介護のために離職をしますか?
結論、ほとんどのケースで
介護離職はしない方がいいです。
なぜならビジネスの最前線で戦っている
ビジネスパーソンの強みを活かすことで
対応できるからです。
35~50歳の方であれば、
職場で責任のある立場の方も多く、
業務量も大変なものだと思います。
つまり介護に時間を割くことが
難しい方が多いです。
一方で多くの方がヒト・モノ・カネ・情報の
マネジメントも経験されています。
管理職でなくても近しい仕事も含めてです。
この強みであるマネジメント力を活かして
介護を乗り切ることができます。
だから介護離職はしなくていいのです。
ヒト・情報・カネのマネジメントで
どのように介護を進めていくのか
具体的なやり方を確認していきましょう。
介護離職の現状
(1)データでみる介護離職
① 超高齢社会が進んでいる⇒1億総介護時代
日本の総人口が減少する中で、
高齢者人口は3588万人と過去最多です。
(2019年9月15日現在推計)
総人口に占める高齢者の割合は
28.4%と過去最高です。
3~4人に1人で高齢者を
支えていることになります。
これからますます高齢者人口が増えるのに、
総人口は減る(少子化)のは明らかです。
引用:総務省統計局
② 介護費用
総額平均は580万円です。
あくまで平均の費用になります。
利用する介護施設が高額であったり、
介護期間が長期化すれば
2,000万円超えることもあります。
・介護期間:平均5年1ヶ月(61ヶ月)
・一時的な費用:平均74万円
・月々の費用が平均8.3万円
引用:生命保険文化センター
「生命保険に関する全国実態調査」/2021(令和3)年度
③ 時間
平均は61.1ヶ月(5年強)です。
こちらもあくまで平均の話です。
10年以上かかるケースもあります。
引用:生命保険文化センター
「生命保険に関する全国実態調査」/2021(令和3)年度
④ 1年でどれぐらい介護離職しているか?
厚生労働省の雇用動向調査によると2020年に
1年間におよそ7.1万人が介護離職しています。
男性は約1.8万人、女性は約5.3万人であり、
女性が男性の3倍程度が介護離職しています。
(2)介護離職するとどうなる?
① 収入がなくなる
無職になれば、当然ながら給与、賞与は
一切なくなります。
失業手当は原則ありますが、
一時しのぎにしかなりません。
退職金も減ります
(勤続年数に比例するため)。
② 介護者の年金受給額が減る
見落とされがちですが、会社員でなくなれば
厚生年金から国民年金に切り替わります。
会社が半分負担してくれていた厚生年金が
なくなり、年金受給額は減ります。
自分の老後生活にマイナス影響です。
③ 再就職が困難になりやすい
40歳を超え、かつキャリアが途絶えれば
再就職は困難になることが多いです。
社会とのつながりも希薄になり、
ビジネス感覚が失われていきます。
④ 被介護者との距離が近くなりすぎる
被介護者との距離が近くなり、
お互い(介護者と被介護者)の悪いところが
見えてきたり、
腹が立つことが増えやすいです。
介護を行う上で、悪影響となります。
ネットワーク活用(マネジメント:ヒト)
介護を“プロジェクト“と捉えて取り組むことで
介護離職せずに乗り切りましょう。
介護を“プロジェクト”というとドライに
感じられるかもしれません。
しかし全体最適を考えると、
感情と切り分けて物事を進めましょう。
結果的に幸せであればそれでいいです。
まずは「ヒト」のマネジメントです。
頼るべき、連携すべきネットワークの構築が
“介護プロジェクト”の要(かなめ)
になります。
(1)たよれる公的機関
① 地域包括支援センター
「介護」が始まったら、もしくは始まる前に
第一に頼る公的機関になります。
ここにいる「介護のプロ」に
アプローチするのが介護プロジェクトの
はじまりとなります。
地域包括支援センターはすべての市町村に
設置されており、全国に5,351か所あります。
(2021年4月末現在)
物理的に行くことが難しい
ということは無さそうです。
地域包括支援センターは、
市町村が設置主体となり、
社会福祉士やケアマネジャー、保健師など
「介護のプロ」がいて、
介護の支援業務をしてくれます。
引用:厚生労働省「地域包括支援センター」
「地域包括支援センター」
覚えにくい名称ですが、
「住まい」「医療」「介護」「予防」
「生活支援」の5つのサービスが
一体的、包括的になっている
センターという意味合いです。
② 市役所
高齢者支援課、介護保険課、福祉局、
健康福祉局など名称は様々ですが、
市役所にも「介護」に携わる
窓口があります。
主に「介護保険」についての
業務を取り扱っています。
・居宅サービス
・施設サービス
・権利擁護等利用助成
・介護保険料の減免等
例えば、
「手すりの取付け」をするのであれば、
改修時に住んでいる住宅につき
1人当たり20万円を限度とし、
対象となる改修費用の7~9割負担します。
などです。
要介護認定などの申請も市役所が窓口です。
③ 認知症カフェ
認知症の人やその家族が、
専門家や地域の人たちと
相互に情報を共有し、
お互いを理解し合う場です。
41都道府県280市町村で、
655カフェが運営されています
(2014年現在)。
地域包括支援センター、介護サービス施設や
事業所が主体となっていることが多いです。
カフェによってちがいはありますが、おおむね
1回の開催時間は2時間程度で、
自由に出入りができ、
参加費用は平均100円~200円です。
気軽に参加できる環境ですので、
具体的な相談や質問がなくても
参加してみるのもありです。
(2)たよれる民間企業
『みんなの介護』
老人ホーム検索サイトですが、これほど
「介護」を総合的に扱っているサイトは
他には無いと思います。
老人ホーム入居先など
相談に乗ってくれます。
『みんなの介護』公式HP
【施設数No.1】老人ホーム検索はみんなの介護 – 7/19空室更新 (minnanokaigo.com)
(3)あなたのお勤め先の会社とも連携する
公的機関、民間企業との連携は重要ですが、
何よりあなたのお勤めの会社に「介護」の実情を
理解してもらわねばなりません。
介護休業や業務割り振りに
大いに関わりがあります。
以下の順番でアプローチしてください。
① 直属の上司
② 人事や総務
③ 労働組合
残念ながら現場は「介護」への理解が
浅いことが多いので、もしかしたら上司に
相談しても話が進まない可能性があります。
しかし人事や総務であれば、
「介護離職」への危機感があり、
介護の情報量が現場より多いはずです。
中小企業事業主だけ対象であったり、
もろもろ条件はありますが、
会社にも助成金が
支給されることもありますので
協力してくれやすいです。
厚生労働省「介護休業制度」
また労働組合がある
一定規模以上の会社であれば、
ワークライフバランス、両立支援、介護を
題材としたセミナーを開催していることも
ありますので積極的に情報収集しましょう。
(4)身内(兄弟姉妹など)も巻き込む
両親の介護には兄弟姉妹など
身内の協力が必要です。
とはいえ多くの方が進んで介護はしません。
介護できる状態の方が身内にいないのであれば
あなたが率先して“介護プロジェクト”を
進めるべきです。
ただし、協力しない身内に対して、
「やらないなら俺が(私が)やる!」と
“意気込んで”もらいたいわけではなく、
“巻き込んで“もらいたいです。
あなたのマネジメント力が問われます。
たとえば、介護のためのグループLINEを
作ったり、共有家計簿をつくったり、
当番制の仕組みをつくったりするのです。
他の誰が介護の主体となりあなたが
“巻き込まれて”動かされる立場になるより
主体的に動いた方が楽なはずです。
介護に関わる情報整理(マネジメント:情報)
本記事だけで
すべての情報を網羅できませんが、
「こんなんあるんだなぁ」レベルで
理解してもらいたいです。
(1)介護の全体像の理解
『みんなの介護』はYouTubeでも
情報発信しています。
たとえば、
・老人ホームの費用の相場
・認知症に対するNG行為
・要介護4はどういうこと?
ショート(最大60秒の動画)も
たくさんあるので忙しい
ビジネスパーソンでも隙間時間で
見ることもできます。
『みんなの介護ちゃんねる』
引用:『みんなの介護』公式HP
(2)介護保険の仕組み
40歳を超えれば、介護保険料を支払義務が
発生しますが、払っている限り何に
使えるかも確認していきましょう。
介護保険は要介護者・要支援者)に、
介護や介護予防でかかる費用の
一部を給付する制度です。
【自己負担】
サービスを受ける場合、
1割の自己負担が発生しますが、
年収によっては自己負担率が2割~3割に
なることがあります。
【保険適応】
介護保険の被保険者となるのは40歳からです。
以下、保険適用の要件となっています。
・第1号被保険者:65歳以上
⇒ 要支援・要介護認定を受けていること
・第2号被保険者:40~64歳
⇒ 16種類の「特定疾病」に該当し、
要支援・要介護認定を受けていること
【サービス内容】
① 居宅サービス
「訪問サービス」
・訪問介護
・訪問入浴介護
・訪問看護
・訪問リハビリ
・居宅療養管理指導
「通所サービス」
・通所介護(デイサービス)
・通所リハビリ(デイケア)
「短期入所サービス」
・短期入所生活介護(ショートステイ)
・短期入所療養介護(ショートステイ)
② 地域密着型サービス
③ 施設サービス
④ 居宅介護支援
⑤ 介護予防サービス
■その他サービス(一部)
「福祉用具貸与」
車いす、杖、手すりレンタルのサービスです。
リフォーム時に補助金を受け取ることで、
工事費用の負担額を減らすことができます。
(3)介護準備
① 心構え
介護の主役は被介護者であるご両親です。
「ご両親がどう生きたいか?」が軸
になります。
十分にご両親の意向をヒアリングしながら
“介護プロジェクト”を進めていきましょう。
一方でご両親の意思を尊重しながらも、
介護者の、あなたの人生はあなた自身で
考えていかねばなりません。
「俺が(私が)やらなければ」という
過剰に責任を負おうとすると
被介護者と共倒れになるかもしれません。
② 家系図の作成
簡単な家系図を作っておきましょう。
目的は協力者を明確にしておくため。
親戚付き合いが少ない場合、
友人も含めて協力者になってくれそうな人を
ピックアップしておきます。
③ 介護休業法の理解
休業できる日数は対象家族1人につき
93日です。
最大で3回に分割して取得可能です。
93日の数え方については、
介護休業をしている期間の土日・祝日の
休日も含めてカウントされます。
休業取得の条件は入社1年以上で、
取得予定日から数えて93日目を経過する日から
6ヶ月以内に退職予定(もしくは契約満了)
ではない労働者です。
対象となる家族は、配偶者、父母、子、
配偶者の父母、祖父母、兄弟姉妹です。
介護費用の管理(マネジメント:カネ)
「カネ」のマネジメントです。
結果、いくら必要でした。ではなく
“介護プロジェクト”にも予算があります。
予算内運用するため、以下確認ください。
予算は会社のように誰かが
立ててくれるものではありませんので、
ご自身で組み立てする必要があります。
(1)費用の出どころは?
基本的には被介護者(ご両親)です。
足りない場合は手助けが
必要かもしれませんが、
最初から介護者(あなた)が全額出すと
あなた自身の人生が上手くいかなくなります。
仮に介護費用をフォローするとしても、
身内(兄弟姉妹など)にも
協力してもらいましょう。
(2)もっとも予算立てが必要なのは入居費
介護費用の中でも最も構成比が大きいのが
老人ホームへの入居費用です。
予算内で管理できる老人ホームを
選ぶ必要があります。
良い老人ホームを選びたくても
選べないこともあります。
引用:みんなの介護「【一覧表でわかる】
老人ホームの費用相場(種類別・都道府県別)」
【一覧表でわかる】老人ホームの費用相場(種類別・都道府県別)|みんなの介護 (minnanokaigo.com)
(3)資産棚卸
ご両親の資産とともに、ご自身の資産棚卸も
同時に行いましょう。
親子トータルで考えておけば、
どこまでなら介護にお金を出せるのかが
明確になります。
ご両親の資産で介護費用は
負担するという前提であれば、
資産だけでなく年金や不動産収入なども
同時に確認ください。
資産も収入も家計簿アプリに
一度登録してしまえば、
確認はとても楽になります。
半年に一度ぐらいのメンテナンスで
十分です。
具体的な管理方法については、
↓↓↓以下の記事↓↓↓が参考になります。
【お金の見える化】資産管理・収支管理を無料の家計簿アプリで解決する – 退職の寺子屋 (ztmhiro.com)
ヒト・情報・カネの管理で“介護プロジェクト”を成功させる
介護はいつ訪れるかわからないので
計画も立てられません。
30代後半から多くの方が
介護を経験することになり、
これからますます対象者は増える見込みです。
年齢的にも業務量、責任もMAX状態の
ビジネスパーソンが多く、
仕事でいっぱいいっぱいの中に
介護が飛び込んでくるのは
本当に酷なものです。
しかし地域包括支援センターや介護保険制度を
含め人的ネットワークを構築し、
必要な情報を整理、資金計画も立てることが
できるスキルを持った方も多いはずです。
“介護プロジェクト”は
きっと成功させられます。
あなたが介護離職しなくても済むように
今後も情報提供して参ります。
なお「介護」は壮大なテーマのため、
別記事でも深掘りした内容を
ご紹介いたします。
① 人的ネットワーク構築で介護離職を防ぐ
② 介護にはどんな情報が必要かわかる
③ 介護費用とどう向き合うかがわかる
どうしても介護離職を
しなければならないこともあります。
「介護」は計画的な動きはできませんが、
↓↓↓「計画的な仕事の辞め方」についてはこちら↓↓↓
【今すぐ会社をやめたい方】ちょっと待って!計画的な仕事の辞め方 – 退職の寺子屋 (ztmhiro.com)