・両親の介護、医療費用を安くしたい
・高額療養費制度以外でも介護、医療費用を抑えたい
・過去の高い医療を払ってしまった!今から高額療養費制度を適応させたい
年齢が上がるにつれて医療費は上がります。
1年間にかかる国民1人当たりの医療費は、33万円(2015年度)です。
後期高齢者になる75歳以上の男性であれば、年間で90万円弱の医療費がかかっている。
年金暮らしにはきついですね。
ニッセイ基礎研究所「医療費は各年齢でどれくらいかかるものなの?」
私事で恐縮ですが、地元で78歳の父親が半身不随(要介護3)で72歳の母親が介護しています。
私は2ヶ月に1回1週間程度、母親の介護フォローをしています。
高額医療制度の対応など、要介護者の父と介護者の母では難しい状態です。
息子の私が情報整理し、対応している内容をまとめましたので共有いたします。
高額療養費とは
高額療養費制度とは、医療費の家計負担を軽くするため、一定額を超える医療費を払い戻してくれる制度です。詳しくみていきましょう。
年収500万円を想定して話を進めます。
(1)上限額の計算方法
年収500万円であれば、ウ(年収370~770万円)にあてはまります。
8~9万円が上限額になります。
仮に医療費で100万円かかっても自己負担額は87,430円で済むわけです。
健康保険は3割が自己負担ですので、本来は300,000円かかるはずですが、高額療養費制度のおかげで212,570円が戻ってくるわけです。
引用:厚生労働省保険局「高額療養費制度を利用される皆さまへ」
(2)何が対象なのか?
すべての医療費が高額療養費制度の対象ではありません。
以下、対象外になります。
【×対象外】
・食事代
・居住費
・先進医療にかかる費用
・差額ベッド代(患者が希望した個室等)
・自由診療(レーシックなどの視力矯正手術など)
・美容整形など
(3)上限額以外にも特典がある
高額療養費制度は医療費の上限額以外にも多くのプラスアフファの特典があります。
①多数回該当
上限額があるとはいえ、医療費が何度(何ヶ月)もかかってしまうと大きな家計負担になります。
過去12ヶ月以内が条件ですが、3回以上、上限額に達した場合は、4回目か上限額が下がります。
たとえば年収500万円であれば、4回目の上限額は44,400円になります。
②世帯合算
同じ世帯にいる他の人の受診について、窓口でそれぞれ支払った自己負担額を1ヶ月(1月1日~12月31日)単位で合算できます。
その合算した額が一定金額を超えた場合、高額療養費として支給されます。
※69歳以下であれば21,000円以上の自己負担のみ合算。
※同じ医療保険に加入していることが条件(住所はちがっても問題なし)。国民健康保険と会社の健康保険組合や後期高齢者も別の医療保険にあたります。
③病気によって特例措置がある
血友病、人工透析、HIVといった高額かつ長期間にわたって継続治療が必要な病気に対して、原則として負担の上限額は月額1万円です。
④健康保険組合によってはさらに負担額が減る
健康保険組合によりますが、多くは「高額療養費」が手厚いです。
私の前職の健康保険組合では67,000円の付加給付があり、最終的な自己負担額は20,430円でした。
(4)【要注意】その他細かいルールがある
① 月またぎに注意
高額療養費はあくまで1ヶ月間で計算されます。1ヶ月は1日~末日です。
たとえば1月16日~2月15日に入院した場合、1月16日~31日と2月1日~15日は別計上されるわけです。
② 医療機関ごとに計算される
高額療養費の対象となる自己負担額は、医療機関ごとに計算されます。
たとえば3月1日~3月7日はA病院に入院、3月8~31日はB病院に入院になると個別に計算されるということになります。
③ 入院と通院は別々に計算される
入院と通院別は別計算です。
(5)高額療養費制度を申請していなかった場合
診療を受けた月の翌月の初日から2年間はさかのぼり請求ができます。
(6)手続きは2通り
高額療養費は立替払いしてから支給申請をする方法と、事前申請しておき立替払いが発生しない方法があります。
①高額療養費の支給申請(立替払い発生する)
一旦、窓口で医療費(3割負担)を支払ってから高額療養費の支給申請をし、払い戻しを受けるやり方です。
・医療費:100万円
・医療保険適応:30万円(窓口負担)
・後日、払い戻し:212,570円
※受診した月から少なくとも3ヶ月程度かかります。
②限度額適応認定証(立替払い発生しない)
事前に申請することで高い医療費の一時的な立て替え支払いが不要になるメリットがあります。
「限度額適用認定証」と保険証を医療機関等の窓口に提示すると対応してくれます。
・医療費:100万円
・高額療養費適応:87,430円(窓口負担)
後期高齢者(介護サービス含む)の医療費補助
75歳以上になると後期高齢者に認定され、保険の種類が変わります。
(1)後期高齢者の高額療養費
74歳以下の高額療養費制度と大きな違いはありませんが、現役並み所得を得ていると上限額は高いです。
なお、後期高齢者医療制度加入後に高額療養費の申請をして、支給を受ければ以後手続きは不要です。
(2)高額介護サービス費
医療保険には高額療養費制度がありますが、介護保険版が高額介護サービス費です。
一般的な所得の方の負担限度額は月額44,400円です。
高額介護サービス費の対象は公的介護保険の自己負担部分(1割~3割)ですが、以下は対象外です。
【×対象外】
・特定福祉用具購入や住宅改修にかかる負担
・施設における居住費(短期入所の場合は滞在費)および食費
・理美容代などの日常生活に要する実費
・生活援助型配食サービスにかかる負担等
なお、手続き方法はサービスを利用した2ヶ月後下旬に支給申請の知らせが届きますので、必要事項を記入の上、返送すればいいです。
(3)高額医療・高額介護合算療養費制度
国民健康保険と介護保険の合算負担額に対して一定の払い戻しがある制度です。
対象期間は毎年8月から翌年7月ですが、注意すべきは申請タイミングです。
自治体から高額介護サービス費の支給申請書が届くのですが、毎年3月に着ます。
4月から費用発生していても翌年3月に申請書が届くので忘れないようにしましょう。
介護による医療費増が発生した場合
介護は突然やってきます。特に介護は初期(2ヶ月程度)が大変なケースが多いです。
バタバタして何がなんだかわからなくなりますが、介護費用を少しでもおさえるために専門家と連携したり、記録を残すなり、対応しておきましょう。
(1)頼るべき人たち:専門分野
① ケアマネジャー:介護全般
② 社会保険労務士:医療保険、介護保険に詳しい
③ 医療機関:高額医療制度など窓口でやってくれている
④ 市役所:医療保険、介護保険の手続き対応
⑤ 税務署:医療費控除、障害者控除など確定申告対応
(2)とにかく医療費明細を取っておく
前述したように高額医療制度や高額介護サービス費は内容によって対象外のものもあります。
つまり医療費明細がないと、医療費総額では判断ができないです。
基本的にはお世話になっている医療機関で手続きしてくれており、間違いはないでしょうが本当に正しいか?自ら申告しないと制度を受けられないものはないか?を自身で理解するためにも明細は残しておきましょう。
介護初期は確認していられないかもしれませんが、落ち着いてから対応する時に役立ちます。
(3)確定申告で医療費控除も忘れずに
1月1日から12月31日までの間に支払った医療費に対して、確定申告することで還付が受けらることがあります。
計算式は以下の通りです。
実際に支払った医療費の合計額 - 10万円 - 保険給付金など
※その年の総所得金額等が200万円未満の人は、総所得金額等の5パーセントの金額
たとえば自己負担額30万円の医療費がかかっていて保険給付金(民間の医療保険)が5万円であれば、30万円 - 10万円 - 5万円 = 15万円 が控除額となります。
以下、一例ですが対象及び対象外の内容です。
カンタンに言うと、“治療”は対象で、“予防”は対象外です。
【〇対象】
・病院で受けた診療、治療費、入院費
・治療のための薬代
・治療上必要な医療器具の購入費用(コルセットなど)
・通院時に利用した電車やバス、タクシーの交通費
・6ヶ月以上寝たきりで医師の治療を受けている場合のオムツ代
・介護保険等の制度で提供された一定の施設・居宅サービスの自己負担分
【×対象外】
・健康診断、人間ドックの費用(異常があれば対象になる)
・自家用車で通院する場合のガソリン代、駐車場料金
・自分で希望して個室を利用したときの差額ベット代
人を頼るが、信じすぎない
あなた自身が介護者、もしくは介護フォロー(たとえば父が要介護、母が介護)する立場であれば是非とも国の公的医療制度や医療費控除を活用し、少しでも介護費用をおさえましょう。
高額医療制度については基本的には医療機関側から言ってくれますが計算まちがいや対応を忘れられることもあるかもしれません。相手も人間です。
人に頼りながらも、自身も“理解”はしておきましょう。
・日本の医療保険、介護保険は手厚い
・高額療養費制度は多数回該当や世帯合算などの特典もある
・高額介護サービス費は高額療養費制度の介護保険版
・確定申告時の医療費控除も忘れずに対応