・転職した時の健康保険の切り替え方法が知りたい
・退職して失業期間があるけど切り替え時の注意点を理解しておきたい
・健康保険料金をできるだけ安くしたい人
「退職したら健康保険ってどうなるの?」
「転職先に入社するの1ヶ月先なんだけど切り替える必要ある?」
そんな疑問にお答えいたします。すぐに転職する場合、再就職までにブランクがある場合、無職がしばらく続くOR個人で独立する、などパターンによって対応は異なります。
社会保険の代表格である健康保険料は金額が大きいです。ミスると無駄な出費が増えます。
私も2022年5月末に退職し、失業期間中ですが国民健康保険に加入していたら月額で20,335円、年間で244,020円も損するところでした。
健康保険切り替えは3択
健康保険は3種類あります。退職をしたら国民健康保険、任継継続制度、家族の扶養に入る、この3択なんですね。
選択肢は「国民健康保険だけじゃない」ことがわかってもらえるかと思います。
①国民健康保険 | ②任意継続制度 | ③家族の扶養 | |
保険料 | 前年所得を元に計算 | 健康保険組合、 協会けんぽによるが、 おおよそ会社員時代の2倍 (今まで会社50%負担のため) | かからない |
扶養 | 加入者数によって保険料増 | 保険料加算なし (会社員時代のまま) | 保険料加算なし (加入条件満たせば) |
加入条件 手続ルール | ・退職後14日以内に手続 | ・退職2ヶ月以上保険加入 ・退職後20日以内に手続 | ・三親等以内の親族 (一部同居要件有) ・失業手当を受けていない (条件に入らないことも) |
窓口 | お住まいの市役所 | 前職の健康保険組合 (OR協会けんぽ) | 被保険者(勤め先)の 健康保険組合 (OR協会けんぽ) |
加入期間 | なし | 最長2年 (途中でやめられる) | 被保険者次第 |
(1)国民健康保険
会社員でなくなると、健康保険組合(OR協会けんぽ)を脱退し、国民健康保険が選択肢のひとつとなります。
保険料は前年の所得を元に計算され、扶養の概念がありません。
つまり会社員時代に配偶者を扶養していた場合、人数分の負担が必要です。たとえば妻が夫の扶養に入っていました、となると2人分の保険料が必要になります。
なお、国民健康保険への切替は退職日から14日以内です。
(2)任意継続制度
任意で会社の健康保険を“継続”できる制度です。
保険料は会社員時代の健康保険料のおよそ2倍です。健康保険料は労使折半なので、会社が50%負担してくれていたからです。
大きな特長として、扶養の概念があることです。妻が夫の扶養に入っていた場合、会社員時代と同じように2人分支払う必要はありません。
また2ヶ月以上、前職の会社の健康保険に加入していることが条件です。
切り替え後、最長2年間加入でき、途中でもやめられます(国民健康保険に切り替え)。
任意継続制度への切替は退職日から20日以内です。
国民健康保険より時間的に余裕がありますが、被扶養者(配偶者など)がいる場合は時間がかかることがあります。(被扶養者の所得証明などの準備で)
私は被扶養者の書類やり取りに時間を要し、20日の期日を守れませんでしたが30日まで待ってもらいました。
早めに健康保険と相談しながら進めれば問題ありません。
(3)扶養に入る
被保険者の扶養に入る方法もあります。被扶養者(あなた)の保険料は一切かからないので条件に問題なければ検討すべきですね。
健康保険は被保険者だけではなく、被保険者(例:あなたの父親)の被扶養者も病気・怪我・死亡・出産などの給付が受けられますのでありがたいですね。
被保険者の扶養に入る条件
【親等は?】
・被保険者の三親等内の親族である
・内縁関係の配偶者およびその父母、子であること(同居を条件とすることもあります)
※配偶者は婚姻届を提出していない事実上婚姻関係も可
【収入要件は?】
・被扶養者(あなた)の年収が130万円未満で、被保険者の年収の2分の1未満(同居している場合)
国民健康保険と任意継続制度の保険料金比較
結論、年収250~350万以上の人は任意継続制度を利用した方がお得なケースが多いです。
具体的な金額は市役所で教えてくれますが「これぐらいの金額になると思うんですが、念のため教えてください」と聞いた方が無難です。
なぜなら担当者によってはあまり知識がないことがあります。あまりにかけ離れた内容であれば、計算根拠を疑った方がいいです。
では実際にしてみて国民健康保険と任意継続制度どちらが得なのか検証してみましょう。
なお、話をわかりやすくするため、前提条件として保険料率は一律(令和4年度、東京都)で夫が元会社員(42歳)、妻は専業主婦(36歳)とします。
(1)国民健康保険料計算はいくら?
計算機に以下の2点を入力してみましょう。0.5秒で計算結果が出ます。なんと便利な。
・年齢区分入力(扶養家族分も)
・年収入力
(2)任継継続の保険料計算はいくら?
一番簡単な確認方法は前職の給与明細です。健康保険料金を2倍した金額がおよその任意継続の保険料金となります。
健康保険料は以下の計算式ですが、協会けんぽと健康保険組合は必要な情報が異なります。
健康保険料 = 標準報酬月額 × 保険料率 × 50%(会社員であれば、会社折半あり)
任意継続保険料計算も便利な計算機があります。
① 協会けんぽの場合(保険料率は?)
東京都:9.81%(都道府県によってちがいますので以下のサイトをご参考に)
② 健康保険組合の場合(保険料率は?)
「〇〇健康保険組合 保険料率」(〇〇はあなたのお勤め先の健康保険組合名)でGoogle検索すれば情報は手に入ります。健康保険組合によって違います。
※あなたの加入している健康保険が協会けんぽか健康保険組合かは保険証で確認ください。
(3)年収別の健康保険料比較
3つのパターンで比較をしてみましょう。前提条件として、保険料率は一律(令和4年度、東京都)で夫が元会社員(42歳)、妻は専業主婦(36歳)とします。
【条件】
・Aさん:年収 700万(年間賞与200万)、標準報酬月額 410,000円
・Bさん:年収 450万(年間賞与100万)、標準報酬月額 300,000円
・Cさん:年収 200万(年間賞与なし)、標準報酬月額 170,000円
【年間保険料比較】
左:国民健康保険 、右:任意継続制度、差(国保 - 任継)
・Aさん:572,415円、482,652円(89,763円)
・Bさん:369,435円、353,160円(16,275円)
・Cさん:186,355円、200,124円(▲13,769円)
【検証結果】
年収250~350万以上の人は任意継続制度を利用した方がお得なケースが多いです(幅があるのは条件により金額に差異があるため)。
ただし諸条件により保険料の算出根拠が異なるので、具体的な金額は市役所に確認してください。
標準報酬月額とは?
報酬(給料など)の月額を区切りのよい幅で分けた金額のことです。
標準報酬月額は健康保険や厚生年金保険の保険料の算定に使われます。
給料(基本給)や各種手当(通勤手当など)が含まれます。賞与は含まれません。
3ヶ月(4月、5月、6月)に支払われた報酬月額を、その期間の月数で割った金額が標準報酬月額として決定されます。
再就職までにブランクあり?なし?の場合
(1)ブランクなし(失業期間なし)転職
基本的にあなたが行う手続きはありません。
退職した前職場の会社に保険証を返却すると「健康保険資格喪失証明書」が交付されます。
この「健康保険資格喪失証明書」を転職先の会社に提出するだけです。
(2)ブランクあり(失業期間あり)転職
基本的に失業期間が1日でもあれば手続きが必要になります。国民健康保険か任意継続か扶養に入るか、の3択ですね。たとえば、以下のようなケースでも切り替え手続き必要です。
【状況】
5月15日 A社 退職
5月25日 B社 転職先入社
【保険適応期間】
5月15日までA社の健康保険の保険証を利用可
5月16日~24日までが空白期間となる
⇒ 空白期間の9日間はどうする?
【対応】
空白期間は健康保険未加入の状態になってしまいます。
日本は「国民皆保険制度」のため健康保険加入の義務があります。自治体によって短期間(数日~数週間)であれば切り替えを待ってくれることもあるようです。
なお保険料は月単位で保険料は徴収され、日割り計算はされません。
各社の給料締め日などの都合で空白期間はできてしまうことが多いです。(再就職する人の74%が空白期間はできてしまうとのデータもあり)
(3)しばらく無職もしくは個人事業主
手続きはブランクありと同じです。昨年度の収入より今年度が少なくなれば、任意継続より国民健康保険の保険料が安くなることがあるので、“国保への切り替え”も可能です。
国民健康保険の減免制度を活用する
保険料の減免制度がある自治体があります。
保険料が数万円程度安くなることもありますので、まずはお住まいの自治体(市役所)のHPで確認してみましょう。(私の住んでいる自治体には制度がありませんでした 涙)
退職、倒産、廃業、営業不振等にかかる減免(要申請)
当年中の見込所得(年度途中の退職等の場合は、当該状況が発生した月以降の見込所得)が、前年比10分の7以下となる世帯 (退職・倒産・廃業・休業や営業不振等のため、見込所得が大幅に減少する世帯) について、医療分・後期高齢者支援金分・介護分保険料の所得割を減免率表に基づき減免します。
健康保険切り替え中で保険証がないんですが?
前職場の会社に健康保険証を返却した翌日に病院にお世話になることがあります。
保険証なしの場合、一旦は病院に全額払います。(あとから払い戻し)
ただし医療機関によっては短期間であれば3割払いで、新保険証ができるまで待ってくれます。
多くの医療機関では以下の流れになります。
1.保険証を持たずに受診する
2.医療機関で一旦医療費10割を支払う(立替)
3.療養費支給申請する
4.「支給決定通知書」が送付される
5.申請書に記入した銀行口座へ支給金額が振り込まれる
療養費支給申請に以下の2点が必要ですので、医療機関(病院)から取得してください。
・領収証
・医療機関発行の診療報酬明細書
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あなたにとってベストな退職時、転職時の健康保険切り替え方法は誰も教えてくれません。
退職前後の手続きは知っているか知らないかで損することは山ほどあります。
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・国民健康保険、任意継続制度、扶養に入る、の3つの選択肢がある
・年収250~350万以上の人は任意継続制度を利用した方がお得なことが多い
・再就職までブランクが1日でもある場合は手続きが必要
・自治体によっては国民健康保険の減免制度が使える
・保険証がない時は一旦全額負担。その後は申請して払い戻しを受ける