☑すでに誓約書にサインをしてしまいました
☑会社に退職報告したら、誓約書を書けと言われている
☑再就職したらすぐに、会社から誓約書を書けと言われている
一般に入社時と退職時、会社によっては昇進時にも誓約書を書かされます。
「この内容、大丈夫かな…?」こんな誓約書を書かされるのはこわいですね。
でも安心してください。
誓約書は書かなくても問題ないです。
誓約書を書かなくても会社に訴えられることはありません。(仮に訴えられても実害はありません)
しかし誓約書を書いてしまったら、訴えられる可能性があります。
本記事を読んでいただくと、あなたが誓約書にしばられず、安心して退職、もしくは再就職先に入社できるようになると思います。
誓約書は書かなくても問題ないが、目的は理解する
会社が書かせようとしている誓約書は書かなくても問題ありません。
なぜなら法的な義務は一切ないからです。
会社から「書かないと訴える」「損害賠償請求するからな」など言われてもおそれることはありません。
損害賠償請求はできますが、法的に認められることはないです。
つまりあなたに実害はありません。
とはいえ、ただ拒否すると円満退職ではなくなります。
また再就職先では今後の評価や人間関係が悪くなりますね。
“ヤバい誓約書”なのか、“一般的な誓約書”かを見極める必要がありますので、まずは誓約書の種類(目的)を理解しましょう。
(1)秘密保持
業務上知り得た、会社のノウハウや顧客情報などの内部情報の持ち出し及び不正利用を防ぐものです。
私も前職退職時に「秘密保持に関する誓約書」を書きました。
内容は簡単に言うと「会社で知り得た、マニュアルや顧客情報、営業数値などの秘密を漏洩させたら損害賠償します」でした。
当たり前の内容ですので承諾しました。
(2)営業妨害の禁止
退職後、会社の営業のさまたげになるような行為を禁止するものです。
たとえば、退職した従業員が転職して、以前担当していた顧客に営業活動をしているケースです。
(3)競業避止義務
「競合企業への転職」「競合する企業の設立」などの競業行為をしてはならないという義務のことです。
たとえば、電気機器メーカーの技術者が、競合する同業他社に転職されたら会社からしたら脅威なわけです。
しかし実際には「職業選択の自由」(憲法第22条第1項)が優先されることがほとんどです。
以下、何やら難しいことが書かれていますが、つまりは地域や時期などを“限定”した上でようやく有効になることがある、という事です。
競業避止義務契約の有効性6つの判断
①を踏まえつつ、競業避止義務契約の内容が目的に照らして合理的な範囲に留まっているかという観点から、
②従業員の地位、
③地域的な限定があるか、
④競業避止義務の存続期間や
⑤禁止される競業行為の範囲について必要な制限が掛けられているか、
⑥代償措置が講じられているか
(4)引き抜き行為の禁止
言葉通り、退職する会社の従業員の引き抜きを禁止するものです。
会社は貴重な人材を引き抜かれると困りますし、場合によってはその人材に関わる顧客までも奪われてしまう懸念があります。
絶対にサインしたらいけない誓約書
絶対にサインしたらいけないのは、会社が独自で作成している“ヤバい”誓約書です。
これらは絶対にサインしてはいけません。
これらを取り扱っている会社は、ブラック企業と思ってまちがいないです。
(1)入社・退職時誓約書:退職金は受け取りません
退職金は賃金なので、会社は原則支払わねばなりません。(全額払い原則)
しかし、あなたが退職金請求権を放棄した場合には、全額払い原則違反にならないのです。
仮にあなたが訴訟を起こしたとしても「労働者の自由な意思があるか?」が争点となり、誓約書にサインをしてしまっていると負ける可能性があります。
(2)入社時誓約書:残業代は請求しません
「時間外手当を一切請求しない」旨の誓約書を書かされることがあります。
訴訟を起こせば、誓約書のその規定は無効であると判断されており、時間外手当を請求することができることが多いです。法律違反ですからね。
とはいえ、退職金同様、「労働者の自由な意思があるか?」が争点となります。
また、あなた自身が「自分でサインしてしまったしな…」と泣き寝入りする材料になってしまうかもしれません。
(3)入社時誓約書:社会保険には入りません
完全にブラック企業です。
社会保険は会社や従業員の意思で加入の有無は決められません。
法律上義務付けられている企業を「強制適用事業所」と言い、従業員が常時5人以上いる個人事業所が該当します。
なぜ会社は社会保険加入を嫌がるのか?
会社も社会保険料を負担するからです。
厚生年金と健康保険は折半(会社と従業員で半々)、雇用保険(会社の方が多く払う)、労災保険は会社が100%負担です。
最低限の従業員の保証もしない、法律も守らない会社は“ヤバい“です。
(4)退職時誓約書:同業他社で働いてはならない
「同業他社への転職は許さない」といった内容ですが、前述した競業避止義務での説明の通り、実際には「職業選択の自由」が優先されることがほとんどです。
要は自由に転職ができます。
仮に会社から競業避止義務違反で訴えられたとしても、心配しなくていいです。(就業規則や雇用契約書に定められていれば、この限りではありません)
範囲は限定的で、会社の機密情報を扱っていた人や、役員レベルが対象です。
(5)退職時誓約書:損害賠償請求を受け入れる
会社に損害を与えてしまったら、損害賠償請求を受け入れる旨の誓約書もやばいです。
誓約書にある義務に違反して会社に損失を与えたら、損害賠償請求されます。
労働契約上の義務違反となり、お金をむしり取られることになります。
“ヤバい”誓約書の書かせ方
”ヤバい”誓約書の書かせ方は、「とりあえず」「いますぐ」がキーワードです。
一般的でない“ヤバい”誓約書を書かせるようなブラック企業は“ヤバい”書かせ方もしてきます。
書かせ方も法律違反をしてきますので、危険なパターンを知っておきましょう。
こんな動きがあったら危険だと思ってください。
(1)「とりあえずここに名前書いて」
誓約書の内容を見せずに、説明もせずに「いいからここにサインして」と言われるケースです。
きわめて危ない会社ですが、実在します。
高い確率で“ヤバい“会社です。
(2)大量の記入必要書類が一気に渡される
退職時、入社時には記入必要書類が多くあります。
事務作業的にサインや印鑑を押すと危ないかもしれません。
大量の書類を渡し、「今日中に記入よろしく」と指示され、しっかり読み込ませずに“ヤバい”誓約書を書かされるかもしれません。
(3)「その場で書いて」
退職時、入社時の記入必要書類は自宅に持ち帰り、内容を精査した上で、記入して提出すべきです。
しかしブラック企業であれば、考えさせると都合が悪いので「その場で書いて、すぐ提出して」と指示をしてきます。
(4)白紙に「名前を書いて」
おそろしく悪質なやり方です。
白紙に名前を書かせて、あとから“ヤバい”誓約書を印刷します。
完全に犯罪です。
残念ながら笑い話ではなく、実話です。
誓約書を書かされそうになった時の対処法
一般的でない、ヤバい誓約書の場合は“拒否”が基本です。
とはいえ、しつこくせまられたり、書かざるをえない状況もありますので対処法も確認しましょう。
(1)誓約書のコピーを取っておく
仮に誓約書を書いても、控えを取っておきましょう。
これはヤバい誓約書だけでなく、一般的な誓約書であってもです。
もっと言えば、誓約書以外も会社とのやり取りはすべて控えを取っておいた方がいいです。
会社とどんな内容のやり取りをしたのか?を把握できないと、後で「こんなのおかしい!訴えてやる!」となった時に根拠がない状態では心もとないです。
弁護士や労働基準監督署などに相談する時にも説明しづらいですよね。
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(2)退職時(入社時)の誓約書の断り方
断っているのに、会社からどうしても「書け」と言われたらサインしましょう。
ただし、部分的に承諾、です。
たとえば、「①秘密保持」「②退職金は請求しない」の2つの内容が記載されている誓約書であれば、①は承諾しますが、②は承諾しませんとの旨を記入します。
具体的には「②退職金は請求しない」は二重線で消して、承諾しない旨を記入しましょう。
(3)退職時(入社時)の誓約書を強制されたら
あまりにもおかしい内容だけどしつこい場合、上記のような部分的な承諾も受け入れてくれないケースです。
訴訟(弁護士や労働基準監督署への相談含め)の準備を進めていきましょう。
訴訟のためには、会社とあなたとのやり取りだけでなく、客観性が必要です。
誓約書のような書類のやり取りであれば、「内容証明郵便」を利用すれば、郵便局が客観的証明となります。
「内容証明郵便」とは誰が、誰に、いつ、どういう内容の郵便を送ったのかを郵便局が証明してくれるという、特別な郵便です。
もし引越しを完了していて新居の住所を会社に知られたくなければ、郵便局へ留め置く「局留め」を利用するといいと思います。
(4)退職時の誓約書にサインしてしまったのですが…
上記の(1)~(3)を行っても、自分で手は追えないと感じたら労働基準監督署や弁護士に相談しましょう。
基本的には“ヤバい誓約書”にサインする前に相談するのが理想ですが、サイン後でも相談することはできます。
特にサイン後の場合は労働基準監督署では対応できないことが多いので、弁護士を頼りましょう。
『法テラス』であれば、無料で相談できます。
法的トラブルに巻き込まれて困っている人向けの無料法律相談所です。
☑受付時間:平日の9時~21時、土曜日の9時から17時(祝日・年末年始を除く)
☑利用料:初回相談0円
☑通話料:フリーダイヤルもあり
「誓約書を書け」と言われたら慎重に対応する
退職時に“ヤバい”誓約書を書かされそうになったら、もしくはすでに“ヤバい”誓約書を書いてしまっていたら、弁護士(法テラスなど)に相談しましょう。
ただし、本記事にあるような「こんな書かされ方はヤバい」とアンテナを立てておき、「書かされそうになったらこう対処する」など、できれば準備をしておくと対応はスムーズです。
また、めでたく再就職したけど、入社時に“ヤバい”誓約書を書かせる会社であれば、早期に脱出されることをオススメいたします。
もし転職サイトなどを使った独りでの転職活動で現職場を決めたのであれば、次の転職は転職のプロである転職エージェントを頼ってみてもいいかもしれません。
・「一般的な」誓約書と「ヤバい」誓約書がある
・「ヤバい」誓約書を取り扱う会社はブラック企業である
・「ヤバい」誓約書は書かせ方もヤバい(法律違反)
・「ヤバい」誓約書は原則、拒否だが、書かされても証拠を残す
・ひとりで抱えきれなくなったら、労働基準監督署や弁護士を頼る
・入社時に”ヤバい”誓約書を書かされる会社は転職する