☑部下にパワハラと訴えられた(訴えられそう)
☑パワハラで訴えられた人はその後どうなるか知りたい
☑部下がパワハラで訴えられた経営者・人事担当・管理職の方
「パワハラで訴えられたらどうしよう…」多くの管理職(経営者、管理者)の悩みです。
パワハラで訴えられても、あなたに悪意がないなら、ビビる必要はありません。(悪意があるパワハラは論外です)
パワハラで訴えられないようにするための準備、訴えられた時の備えをしましょう。
実は私も前職の管理職をしている時に、パワハラで訴えられそうになった経験があります。
また7年間の労働組合経験から多くのパワハラ案件に対応してきましたし、実際に訴えられた先輩管理職もいましたので、実例も合わせてお伝えいたします。
パワハラで訴えられた人のその後は?
パワハラで訴えられたらどんな流れになるのか?具体的な手順を確認しましょう。
なお、パワハラで訴えられる立場の人=行為者、訴える人=被害者と定義して話を進めます。
(1)パワハラで訴えられた時の流れ
①会社に報告
すぐに会社(上司や人事担当)に報告しましょう。
「会社にバレたら困る」と、個人的に対応するは絶対にやめた方がいいです。
隠ぺいしているとみなされてデメリットしかありません。
会社に時系列で事実を報告しましょう。
②行為者と被害者を隔離
物理的に隔離されることがほとんどです。
行為者か被害者のいずれかが一時的に異動することが一般です。
③行為者と被害者から事情をヒアリング
両者から事情をヒアリングし、事実関係を明らかにします。
④メール、LINE、音声データ等内容確認
文面や音声データなどで残っている記録を確認し、裏付けを取ります。
⑤目撃者のヒアリング
被害者がパワハラと主張している内容について、目撃者がいればヒアリングします。
⑥パワハラの判断
①~⑤の状況を整理し、パワハラ案件か否かの判断がなされます。
(2)パワハラ認定されたら3つの責任がある
会社、民事、刑事の3つの責任が発生します。
最悪のケースは、会社からは懲戒処分、1億円の損害賠償、前科者になります。
①会社の処分
以下の順番(上ほど重い)で会社から処分が下されます。
☑懲戒解雇
☑出勤停止
☑降格
☑減給
☑異動
②民事事件による処分
「損害賠償」や「慰謝料」を請求されます。
ハラスメント(パワハラやセクハラ)の場合、一般的50万~300万円程度が相場です。
ただし精神疾患など、後遺症が残る場合はこの限りではありません。
命を落とされたりすると、逸失利益(生きていれば本来得られるお金)として1億円以上の請求もありえます。
③刑事罰として裁かれる
パワハラの場合、主に以下の罪に問われます。
前科になることもあります。
☑暴行罪:ボールペンで小突かれた(ケガはしていない)
☑傷害罪:灰皿を投げられ、額を負傷した (ケガをした)
☑侮辱罪:「この能無しが」などと発言した
(3)パワハラ認定されない場合(判例あり)
いわれのないパワハラを主張されても、正しい対応をすれば、裁判で勝訴したケースがあります。
ポイントは業務改善のために必要な叱責であり、穏やかなトーンでの指導であることです。
①概要
とある看護師が上司4名から指導、叱責を受けたことがパワハラだと合計440万円の損害賠償を請求した。
②争点
日ごろからミスを繰り返していた看護師が、処方箋の指示の2倍量の薬を用意するというミスを犯したため、上司らが1時間半以上にわたり叱責をした。退職についても言及された。
③裁判所の判断
1時間半以上の叱責について、指導の範囲内であり、パワハラとまではいえないと判断された。
④裁判所の判断理由
・発言の目的が正当なため
・改善ができなければ勤務継続が難しくなる(退職)ことを自覚させるため
・終始落ち着いた口調で話しかけているため
引用:弁護士法人 咲くやこの花法律事務所「1時間半以上の叱責についてパワハラに該当しないと判断した裁判例のご紹介」
何がパワハラに該当するのか?しないのか?
「パワハラは上司が部下にするものだ」と多くの人が思い込んでいたり、そもそもパワハラとは何か?が正しく認識されていません。
パワハラについての知識を深めましょう。
(1)パワハラの定義
厚生労働省はパワハラを以下のように定義をしています。
職場のパワーハラスメントとは、職場において行われる①優越的な関係を背景とした言動であって、②業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、③労働者の就業環境が害されるものであり、①から③までの3つの要素を全て満たすものをいいます。
なお、客観的にみて、業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な業務指示や指導については、職場におけるパワーハラスメントには該当しません。
(2)正当な指導であればいい
上記の厚生労働省の定義の中で重要なのが後半部分で、「業務上必要な指示や指導」はパワーハラスメントに該当しないのです。
“感情的”に人格否定をしていればパワハラに該当しますが、業務遂行のための“合理的”な指導であれば問題ありません。というか仕事なんですから、当然必要ですね。
(3)誰が、いつ、何を発言した?
発言の内容だけでなく、その時の状況や日頃の関係性も踏まえてパワハラかどうか判断されます。
「部下との信頼関係…部下を迎合するしかない」という意味ではありません。
日頃から指導していないのに、いきなり核心にせまるような指導は適切ではないとうことです。
あくまで“業務遂行”を中心に考えましょう。仕事ですから。
【実例】モンスター社員にパワハラと訴えられたら?処分は?
私の先輩管理職Aさんがモンスター社員Bさんにパワハラだと会社に訴えられた話です。
結論、しっかり事実確認をされ、管理職Aさんは特におとがめはありません。
訴えられてから今まで何があったのか?見ていきましょう。
(1)何があったのか?
モンスター社員Bさんは終業時間前に帰ってしまうことがありました。
理由は「体調が悪くなったから」とのことでした。
管理職Aさんは「体調不良はし方ないけど、私まで報告してください」と指導しました。
しかし改善しないため、毎日報告を求めました。
報告がない日には定刻に電話をして「報告は?」と問い詰めました。
それが気に入らなかったのかモンスター社員Bさんは「なんで毎日電話してくるんだ。精神的に追い込まれた」として、会社に管理職Aさんをパワハラされていると訴えました。
(2)会社の判断は?
会社は事実関係を調査し、管理職Aさんに非がないことはすぐに明らかになりました。
同じ営業所に目撃者もいましたし。
それでも管理職Aさんをモンスター社員Bさんから一時的隔離するために、異動が命じられました。
管理職Aさんは半年で同じ営業所に戻ってきました。
逆にモンスター社員Bさんは営業本社に異動になりました。この異動は決して出世ではなく、会社が監視しやすい部署に移したのです。
管理職Aさんは異動の一件以降、何のおとがめもありません。
(3)今後どうなるのか?
訴えてから7年経った今も、モンスター社員Bさんは会社の判断に納得していないらしいです。(営業本社からの情報)
それでも管理職Aさんは今後、おそらく何のおとがめもないと思われます。
むしろ会社はモンスター社員Bさんを要注意人物としてロックオンしています。
↓↓↓パワハラ訴訟しがちなモンスター社員↓↓↓
部下からパワハラで訴えられたんだけど…対策と心得
パワハラと訴えられた時はどうするのか?
また訴えられる前に準備できることは何か?
心得と具体的な対策を確認しましょう。
(1)パワハラは訴えたもん勝ちではない
まず冷静になることです。
あなたの上司から「おい!君の部下からパワハラって訴えられてるぞ」と言われたら相当ドキッとします。
私も管理職経験があるのでよくわかります。
血の気が引くぐらいに「マジで…?どうしよう」となります。
では大丈夫です。会社だって味方です。
考えてもみてください。
会社があなたを管理者にしたということは評価されている証拠です。
会社が評価している人間を本当に問題なければ不利な状況に追い込むことはないでしょう。(会社があなたをクビにしたいのなら別ですが)
少数派だし盛り上がらないのでスポット当たりませんが、実際にはパワハラ冤罪も問題視されています。
「パワハラは訴えたもん勝ち」ということは決してありません。
厚生労働省の「ハラスメントって言われた」管理職向けのサイトがあります。
国もあなたの味方です。
引用:明るい職場応援団「ハラスメントって言われた! 管理職の方」
↓↓↓パワハラは訴えたもん勝ちではない↓↓↓
(2)パワハラで訴えられたから仕返し ⇒ ×
上司から「君の部下が、君をパワハラって訴えるって言ってるぞ」と言われたらものすごく腹が立ちますよね?
自覚してパワハラしているなら論外ですが、日頃からしっかり指導している部下から突然パワハラと言われたら頭に血が上ります。
しかしやはり冷静になりましょう。
いつもの冷静なあなたなら言わないことも、頭にきて色々と言ってしまうかもしれません。
上司から呼び出されてあなたは事情をヒアリングされると思いますが、その後すぐにパワハラを訴えてきた部下に電話して「何を言ってんだ!お前」や「いい度胸してんな、許さんぞ」みたいな発言は絶対にしてはなりません。
上記のような行為をセカンドハラスメントと言います。
ハラスメントの二次被害ですね。
パワハラが冤罪(えんざい)であっても、このセカンドハラスメントでアウトになるケースもあります。
狡猾な部下だったら、それも計算でワナを仕掛けてくるかもしれません。
↓↓↓部下は「ざまあみろ退職」を考えているかも↓↓↓
(3)訴訟に備える(証拠集め)
①発言に気を付ける
パワハラと訴える人は常にICレコーダーであなたの発言を録音していると思った方がいいです。
「これは業務改善を目的とした指導か?」と自分に問い、落ち着いた穏やかな指導を心がけましょう。(ここは精神論)
②メールなどの書面で残す
パワハラと訴えられた時に、言った言わないとならないための証拠を残すためです。
少しデリケートな内容(例:評価面談のフィードバックなど)は口頭と同時に書面でも残しておきましょう。
③日記をつける
日記は立派な証拠ですし、客観視することで見えてくることもあります。
「この時の指導はこの業務指導のためだ」と記録しておきましょう。
忙しいあなたは3ヶ月前のことは覚えていないと思いますが、パワハラと訴える人は覚えています。
会社からのヒアリングの時に「どうだったかなぁ…」となると不利になるのはあなたです。
(4)パワハラで訴えられた時の相談先
もし…もし会社が味方になってくれなくても絶望しなくていいです。
公的機関(厚生労働省-相談窓口のご案内)を頼りましょう。
いずれも公的機関なので無料です。
パワハラ被害者だけでなく、パワハラ加害者にされそうな人の相談窓口もあります。
①総合労働相談コーナー
職場のトラブルに関するご相談を受け付けています。
☑専門の相談員が面談もしくは電話で対応
☑予約不要、利用は無料
☑相談者の秘密厳守
②ハラスメント悩み相談室
職場のハラスメントに特化した相談室です。
土日もやっていて、電話で話にくければ、LINEでも相談受け付けています。
☑電話対応時間:月曜~金曜 17:00~22:00/土曜・日曜 10:00~17:00
☑メール相談:24時間受付(72時間以内に返信)
☑SNS(LINE)相談:24時間受付(48時間以内に返信)
③弁護士を頼る(法テラス)
法的トラブルに巻き込まれて困っている人向けの無料法律相談所です。
☑受付時間:平日の9時~21時、土曜日の9時から17時(祝日・年末年始を除く)
☑利用料:初回相談0円
☑通話料:フリーダイヤルもあり
(5)パワハラで訴えられた!知恵袋に相談していいですか?
相談するのは構わないと思います。参考にはなります。
しかし内容は参考程度にすべきで、すべては信用してはなりません。
私も毎日、知恵袋の回答しているのでよくわかりますが、回答は玉石混合(良いのも悪いのもある)です。
知恵袋でそれらしい回答を得たからといって、その内容を信じてパワハラというデリケートな問題に立ち向かうのはきわめて危険です。
社内であれば直属の上司や人事総務部、社外であれば本記事でご紹介している公的機関や弁護士に相談の上、進めてください。
パワハラは正しくおそれる
管理職にとって部下からの「パワハラで訴える」はとても怖いものです。
今までの努力で積み上げてきたもの、信じていたもの、多くのものが崩れて落ちていきます。
しかしパワハラをおそれて部下に迎合したり、全く指導できなくなると仕事が進みません。
厚生労働省(国)の定義の通り、指導のすべてがパワハラでもありません。
パワハラの正しい知識を持ち、パワハラと訴えられることを想定して、事前に証拠集めなどの準備をしておくことをオススメいたします。
・パワハラ認定されたら3つの責任(会社、民事、刑事)がある
・国(厚生労働省)も適正な業務指示はパワハラではないと定義している
・訴訟に備えて証拠集めをしておく(事実が時系列でわかるように)
・会社が信用できなければ、公的機関を頼る